スポーツを楽しみ、スポーツに参加する機会を持つことは、すべての人が持つ自由です。しかし、様々な障がいを持つ人たちにとっては、必ずしも現実となっていません。例えば自分一人で思うままに走るということさえ、視覚障がい者にとってはほぼ実現不可能な夢となってしまっています。
スポーツ庁によると、日本では、日常的に運動をしている人は約 6 割。しかし、視覚障がい者の間では約3 割にとどまっています(*スポーツ庁 令和2年度「障害者のスポーツ参加促進に関する調査研究」 / 「スポーツ実施状況等に関する世論調査」)。視覚障がいを持つ人がランニングを楽しむためには、通常、目の見えるランナーが伴走して視覚障がい者にとっての「目」となり、ともに走ることが必要です。視覚障がいを持つランナーと伴走者とが信頼関係を築き、息を合わせてゴールを目指すことはブラインドマラソンの醍醐味でもあります。ただ、それとは別に、「自分の思う通りに、誰にも頼ることなく自由に走ってみたい」と願うのは、障がいの有無に関わらずあらゆるランナーが持つ思いです。
Project Guideline はそんな思いに寄り添い、視覚障がいを持つランナーが一人で自由に走ることを可能にすることを目指す、Google の研究開発プロジェクトです。
すべての人が自分の可能性を追求できる社会へ
音声ガイダンスに対応した動画はこちらから視聴ください。
「視覚障がいを持つランナーが一人で走るために、テクノロジーを使ってできることはないだろうか?」
米国の一人の盲目のランナーからのこの問いかけに答えることが、私たちの出発点でした。すべての人が、自由に、自立して自分の可能性を追求できる。そんな社会を目指す小さな一歩として、この実験は始まりました。
誰もが使えるようになるためには、誰もがアクセスできる技術でなければなりません。どこにでもあるスマートフォンとヘッドフォンを使い、ランナーをガイドする技術を提供することを目指すこの研究開発プロジェクトは、米国で 2020 年に発表されました。
パラスポーツ、そしてスポーツ全般への注目が高まる今年、このプロジェクトを日本でも発表します。全盲のランナー・御園 政光さんを日本における最初のパートナーとして迎えて、テストとフィードバックを繰り返し、5 月には Project Guideline の助けだけで 10km を走り切ることに成功しました。今後はより多くの視覚障がいをもつ方たちに体験していただき、この技術をさらに向上させていきたいと考えています。
Project Guideline の仕組み
Project Guideline は、Android スマートフォンで動作する画像認識技術を使用しています。地面に引かれた色のついた線を見分け、その線がランナーよりも左か、右か、中央なのかを瞬時に判断し、ヘッドフォンを通じて音声シグナルを送ります。ランナーはその音を頼りに、線から逸れることなくランニングを楽しめる仕組みです。
人間の目では道路に引かれた線を見分けることは容易ですが、それを機械で処理することは決して簡単ではありません。ランナーが装着したカメラに映る線は常に揺れていますし、外に出れば光の向きや明るさも常に変化します。コースには影や落ち葉が落ち、地面の色も一定ではありません。コースのカーブにも対応しなくてはなりません。
そうした様々な条件下でも正確な判断をできるよう、私たちは Google が公開する機械学習用オープンソースライブラリ TensorFlow™ を活用した機械学習モデルを構築し、可能な限り多様な状況でデータを収集してモデルに学習させ、精度を向上させていく取り組みを続けています。また、できる限り多くの視覚障がい者の方々に実際に Project Guideline をテストしてもらい、フィードバックをいただくことで、ユーザーにとってより安全で使いやすいシステムにしていきたいと考えています。
パートナー募集
Project Guideline は、技術開発とユーザー体験の改良を重ねている初期段階の研究開発プロジェクトです。このプロジェクトに賛同し、データ収集のためのイベントやフィールドテストに協力いただける企業やNPO、また、テストに協力してフィードバックをいただける視覚障がい者の方を募集しています。プロジェクトの詳細や今後のイベント・テストの情報などは Project Guideline のウェブサイトに逐次掲載していきます。ご関心のある方はウェブサイト上のフォームからご連絡ください。
メールでのお問い合わせ: pr-jp@google.com メディア関係者以外からのお問い合わせにはお答えいたしかねます。 その他すべてのお問い合わせにつきましては、ヘルプセンターをご覧ください。